聖夜を前に…
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


クリスマスが間近いからというよりも、
陽が落ちるのが早くなる分、物寂しい佇まいになるのを彩りたくてか。
駅前や商店街といった繁華街などで、
街路樹へのイルミネーションが始まっており。

「あ、これ可愛いvv」
「さすがは今時ですよね。」

髪留めやデコシール、ちょっとしたコスメなどなど、
ファンシーなグッズを扱う雑貨店なのに、
店頭にはキーケースやストラップに混じって他愛ないおもちゃが並び。
パーティーなどでの賞品にいかがですか?とのポップが躍る。
女子高生の片手に納まるほどという小ささなのに、
ただカタカタと歩くだけじゃあなく、
台の端まで来ると、方向転換する辺り、

 「一丁前にセンサーついてますよ、これ。」
 「ホントだ。」
 「こっちのも。」

金の綿毛が凛々しいお顔に華やかさを加味する、
それは目を引く風貌の少女が手にしたのは、
茶色のボアをまとったトナカイのおもちゃで。
そちらは壁に当たりかかると方向転換するらしく。

 「こんなに小さいのにまでそういう機能がついてますか。」
 「そのくらいの動作でいいような容量の、
  簡単なICチップなら、安価で大量生産できますからね。」

ジャンク屋っていうんでしょうか、
電子系の部品とか扱ってる、電機街の行きつけのお店があるんですが、
出たばっかだったろう数年前とは比べものにならないほど
値崩れしている基盤も山ほどありますものと。
ふんわり柔らかな赤毛に、
キュートな印象の猫目が愛らしい、
小柄な少女がさらりと口にしたけれど。
それはそれで、専門的過ぎてついてけない事情だったので、
“あはは…”と乾いた苦笑をこぼしたのが、
やはり金の髪をした、こちらは嫋やかな印象の美少女だ。
ボアの縁取りも大人しめに抑えた、
カシミアのショートコートが良く似合う、
女子高生だろうに、
品のある落ち着きがなかなか様になっている、
優等生タイプのお嬢様で。
とはいえ、
その落ち着きっぷりに油断していると、
不意を突かれてえらい目にも遭いかねぬ、
とんでもなく行動的でもある美少女たちでもあって。

 「あらあら、お言葉ですこと。」
 「そうですよね。」
 「…、…、…。(頷、頷、頷)」
 「私たち、
  和やかなクリスマスを過ごそうという
  準備に来ておりますのに。」



       ◇◇


このシリーズは、
原則“年齢進行は無しよ”というのがお約束となっておりますゆえ。
去年はとか、一昨年は、とかいう話題が出て来たとしても、
現今の彼女らは あくまでも高校二年生のヲトメたちのまんまでございます。
過去のお話を持って来るって言うんだったら、
アタシら“前世”なんていうもっと昔話も持ち出せるぞという、
融通が利くんだか、それとも却って混線しちゃうんだか、
困った設定の持ち主さんたちでもあり。
(その割に最近あんまり生かせておりませんが…)
おいおい
それより何より、チョー前向きなお人たちなので、
昨年 何か大変なことがあったとしても、
そんなもん 余裕でくぐり抜けたわ、わっはっはと
あっさり笑い飛ばしてしまわれる
太っ腹、もとえ豪気な御方ばかりであったりし。


  何か失敬な言われようをしているようだけれど
  そんなの全然 気にしないわ。

  そうね、そうよね。

  …、…、…vv(頷、頷、頷)

  女子高生でいられる時期は短い、
  今を大事に生きるのよ。

  ええ、二度とない青春ですものね。

  ………?(青春はともかく二度目なんじゃあ…?)


   「久蔵殿、ノリです、ノリ。」
   「そうそう。」

   「〜〜〜〜〜〜。(済まぬ。)」



       ◇◇


……と言いつつ、
3年目のクリスマスを迎えんとしているお嬢様たちですが。
(こらー)
通っておいでの女学園でも、
先月の半ばに催されたマラソン大会に、
やはりその11月末に数え初めを迎えたアドベントのミサもあり、
今月の頭には、やって来ました期末考査…という、
様々な行事を順当に迎えたそのまんま、次々にクリアして来ての、
今日はその試験週間の最終日だったという運び。

 『ごきげんよう、白百合のお姉様。』
 『クリスマスミサまで ごきげんよう、紅バラ様。』
 『しばしのお別れですわね、ひなげしさん。』

クラスメートのみならず、
下級生の妹御たちや、上級生のお姉様がたにも
たいそう人気のある彼女らなので。
お廊下や昇降口などでも、
ご挨拶のお声が降るように掛けられての忙しく。
皆様とお揃いの清楚なコート姿になっても、
何故だか はっと人目を引く、
それぞれに個性的かつ印象的な美少女ぞろいの三人娘。
今日は部活もないのでと、
三人揃っての帰宅と相成って。
本当なら寄り道も厳禁というのが校則なれど、

 「お二方、寄って来ませんか?」
 「行く行くvv」
 「…vv」

授業は午前までだったので、
お弁当もなしの早上がり…ではあれど。
最終日とあって、大掃除もあったしHRもあった。
……ので、ちみっと小腹が空いてもいたし、

 「何だか冷えますものね、今日は。」
 「昨日、雨が降ったからでしょうかね。」

口許から出る吐息も、
そういえば いつの間にか白くけぶるようになっており。
しかもしかも、
今日は昼になっても朝と差のない寒さが続いているとあって、

 「ゴロさんに温かいもの作ってもらいましょvv」
 「あ、アタシ田舎じるこがいいなvv」
 「………vv」
 「久蔵殿もですね、判りましたvv」

手慣れた操作で薄いスマホからメールを送信する平八なのへ、

 「あ、ヘイさん買ったんだ♪」

目ざとく気づいてのこと、七郎次が声を掛けての手元を覗き込む。
アプリのアイコンが
指先でひょいひょいと操れちゃうのは、なかなか楽しそうで、

 「買った…ってゆっか、お爺様に貰ったんですよォ。」
 「いいなァ。」

何でも、日本の某メーカーの相談役に就任したとかで、
そんなせいで融通が利くらしくてと。
まだ市場には出回ってないアプリも入ってるんですよねなんて、
相変わらず こういうメカには目がないひなげしさんが
キャッキャとはしゃぐ傍らから、

 「♪♪。」
 「あ、久蔵殿もですか? 榊せんせとお揃い?」

そちらさんは、シルバー仕様の
いかにもお嬢様デザインのを
白いお手々へ乗っけて出して見せた三木さんチのご令嬢、

  買い替えに付いてってもらったの?
  あ、もしかしてそれを口実にお買い物へ付き合って貰ったとか?
  〜〜〜〜。/////////

いやあの、口実ということはないんだが…と。
コートの丸襟の狭間へ細い顎を突っ込むほど首を縮め、
淡い緋色の口許をうにむにとたわめ、
いやぁん/////と 含羞む紅ばらさんであり。

 「…やっぱ、口実ですね。」
 「つか、榊せんせえが口実にして連れ出したんじゃあ。」

  久蔵が可愛くて しょうがないくせに、
  本人へはどっかつれないんですものね。
  そうそう、素直じゃないったら…と、

金髪と赤毛のお友達二人が
冷やかし半分にわざとらしくこそこそと囁き合って見せ。
そこはさすがに久蔵の側も慣れたか、
こらぁっと腕を上げ、
いいかげんにせんかと怒る真似をしたところで、
一通りのオチがついたものの、

 「アタシも買い替えようかと思わなくないのですが。」

コートのポケットから、自分のスリムなケータイを取り出し、
う〜んと唸ってしまう草野さんチのお嬢様。
日本画壇の大家のお嬢様だからといっても、
決して漆塗りのシックなそれとかじゃあなく。
どちらかと言えば、
金髪に青い双眸、白い頬という、
欧風の透明感をまとった彼女の風情に相応しい、
深みのある濃青メタル、パール仕様というカジュアルなそれ。
機能もまあまあ新しいほうなので不自由はしていないのと、

 「………うん。まだいいかなぁ、と。」

ぱかり開いたことで起動した液晶画面。
そこへと現れた画像へ、視線が留まり、
そのまま瞬ぎもせぬという
“釘付け”状態となってしまったらしき白百合さんへ、

 「…あれってきっと、勘兵衛さんの画像が収まってるんですよ?」
 「…、…、…。(頷、頷、頷)」

  百戦錬磨、師範さえ蹴たぐる鬼百合も形無しですよね。
  うむ、シマダも果報者ぞ…と、

今度は別な顔触れによる“聞こえよがし”の図となって。
こらぁっと白百合さんがこぶしを振り上げたので、
キャッとはしゃいだ あとの二人、たかたか駆けて駆けて駆け込んだのが、

 「いらっしゃ…おお、ヘイさんたちだったか。」

彼女らの行きつけにして、平八の下宿先、
甘味処『八百萬屋』だったのでございました。






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 *ついついお喋りシーンで乗ってしまって、
  冒頭のお買い物シーンへ辿り着けんかった…。
  何だか長くなって来たので分けますね。
  ちなみに、
  相変わらずケータイさえ持ってないもーりんですので、
  スマホもタブレット端末もよく判ってません。


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